自社の商品を海外顧客向けに販売する手段として、越境ECを始めようと検討している方は多いのではないでしょうか。しかし、越境ECの始め方や具体的なメリットが想像できないという方もいらっしゃると思います。本記事では、越境ECのメリット・デメリットを解説するとともに、越境ECの始め方を紹介するのでぜひ参考にしてください。
なお、越境ECの各プラットフォームについては以下の記事で紹介しています。
越境ECとは?
越境ECとは、日本で販売している商品をECサイトを通じて、海外顧客向けに販売する販売手法のことを指します。
販路が拡大することで、より多くの顧客獲得が見込め、大きな売り上げが期待できるでしょう。越境ECの市場規模は世界的にも拡大しているため、多くのビジネスチャンスが期待できると言えます。
日本・アメリカ・中国での市場規模は拡大中
経済産業省によると、日本・アメリカ・中国の3カ国間において、電子商取引の市場規模が拡大しているとの調査結果※が出ています。なかでも、中国消費者が日本の事業者から購入した額は2兆1,382億円(2020年比9.7%増)でした。
以下の表のように、越境ECの購入額は年々増加傾向にあることから、日本・アメリカ・中国の3カ国間において、今後も市場規模の拡大が予想されます。
国 | 越境EC購入額(2019年) | 越境EC購入額(2020年) | 越境EC購入額(2021年) | 伸び率(2021年) |
日本 | 3,175億円 | 3,416億円 | 3,727億円 | 9.10% |
米国 | 1兆5,570億円 | 1兆7,108億円 | 2兆409億円 | 19.30% |
中国 | 3兆6,652億円 | 4兆2,617億円 | 4兆7,165億円 | 10.70% |
※出典:経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果」
越境EC市場が拡大を続ける背景
越境EC市場が拡大を続ける理由は以下のとおりです。
- ネットインフラの普及
- 海外のEC消費の拡大
- 最低限のコストで海外進出できる
- 日本製品の信頼度の高さ
近年、スマホを持つのが当たり前となり、店舗に出向かなくても商品の購入ができる時代となっています。
とくに、今までは現地に出かけなくては手に入らなかった商品もスマホで簡単に購入できるようになり、購入者にとってのメリットが大きいというのも越境ECが拡大している理由の1つでしょう。
また、越境ECであれば、海外へ実店舗を出店するよりもコストを抑えることが可能です。さらに国内の越境EC販売額の拡大においては、日本を訪れて購入した商品を帰国後にリピート購入するなど、日本製品の信頼度の高さが越境EC市場が拡大している理由として挙げられます。
越境ECを始めるメリット
EC事業者が越境ECに乗り出す具体的メリットは何でしょうか?ここでは4つのメリットを紹介します。
1.商圏を海外に拡大することで顧客獲得の機会が増える
当然かもしれませんが、国内のみで販売していた商品を海外でも販売することで、より多くの顧客獲得が見込めます。
商品の種類やクオリティによっては、海外顧客からの需要が国内需要を上回ることもあるでしょう。
顧客獲得の機会が増えれば、売り上げの増加に直接作用するので、大きなメリットだといえます。
2.実店舗よりも容易に展開できる
海外に実店舗を出店するとなれば、多くの資金や時間、手間を必要とするので、膨大なコストをかけることになるでしょう。
しかし、越境ECでは、ECサイトを通じて顧客に商品を販売するので、最低限のコストで海外顧客に向けて商品を販売することが可能です。
3.自社商材に対するライバルが少ない可能性がある
国内でライバルが多い商品を販売している場合でも、海外においてはライバルが少ない可能性があります。まだ、海外の一般市場で販売されていない、希少価値の高い商品を扱っている事業者には狙い目です。
4.「日本製」というブランドで付加価値が付く
海外から見た日本製の商品は、「衛生的」で「安心・安全」、「信頼できる」イメージがあるため、付加価値が付きます。
過去に日本を訪れ、その後リピート購入を越境ECで行う海外消費者も多く、日本製の品質の高さが世界で評価されていることは越境EC運営において大きなメリットとなります。
越境ECで生じるデメリット
越境ECで商品を販売する際、国内で販売することと比べて、いくつかのデメリットも存在します。ここでは3つのデメリットを見ていきましょう。
国際物流への対応が必要になる
越境ECでは、販売する商品が国境をまたぐため、国際物流への対応が必要になります。
商品を輸出するためには、「インボイスの作成」「航空便や船便の手配」「関税の算出と徴収方法の設定」が必要です。
現地の配送問題や関税などの知識を身につける必要があるでしょう。
国や地域によって異なる規制や決済手段への対応が必要になる
国や地域によって規制や決済手段が異なるため、それぞれ個別に対応が必要になります。
具体的には、商品情報の多言語化、決済手段の把握、販売するための届け出などが必要になるでしょう。
国によっては、食品や電子機器などの販売を規制していることもあるので、越境ECで販売する商品が対象の国で販売可能かどうかを事前に確認しておくことが大切です。
輸送コストが高くつく
越境ECは商品を日本から海外に輸出するため、配送料金や手数料が高額になります。
また、外貨で決済が行われる関係上、為替レートの変動によっても価格に差が出てしまう点に注意が必要です。
輸送コストが高くなることから、顧客への負担も大きくなるため、普段「低価格」を売りにしている商品でも、国内向けの販売戦略と分けて考える必要があります。
越境ECを検討するときのチェックポイント
越境ECのメリット・デメリットを理解した上で実際に始めるべきか迷っている方も多いでしょう。ここでは、越境ECを検討するときのチェックポイントを2つ紹介します。
自社商材は越境EC向きなのか検討する
まずは、自社商材が越境EC向きなのかを慎重に検討しましょう。例えば、賞味期限の短い食品や壊れ物などは不向きといえるでしょう。
また、商品を輸出する際にかけられる関税は、商品の種類によって異なります。毛皮のコートや革靴などは関税が高い傾向にあるので、事前に確認しておきましょう。
逆に、電子書籍やオンラインゲームなど、デジタル商品であれば、輸送コストや手間がかからないので越境ECに最も適した商材であるといえます。
進出先での自社商材のニーズをリサーチする
日本と海外には文化の違いがあるため、日本で売れている商品が必ず海外でも売れるとは限りません。逆に、日本では当たり前に販売されている商品でも、海外市場においては珍しい商品であるため、高値で売れることもあるでしょう。
越境ECを検討する際は、販売先の国において、自社商材のニーズがどの程度なのか事前にリサーチする必要があります。
越境ECの始め方
越境ECは海外への販路を獲得するということもあり、難しいイメージを持たれているかもしれません。ここでは越境ECの始め方を4つの段階に分けて紹介します。
取り扱う商品やサービスを選定する
まずは取り扱う商品やサービスを選びましょう。上記でも解説したとおり、輸出先の国でのニーズが高い商品を選ぶ必要があります。
進出先の法律や規制などを確認する
取り扱う商品を決めたら、その商品が進出先の国で問題なく販売できるかを確認しておきましょう。同じ商品でも、進出先の国によっては販売できないケースがよくあります。とくに中国では、法律や規制が頻繁に改訂されるので注意が必要です。
予算を確保して運営体制を構築する
越境ECは海外に実店舗を出店することに比べて、予算も人員も抑えられるのが特徴ですが、まったく必要ないというわけではありません。事前に予算を確保して、語学が堪能な人材を配置したり、越境ECの稼働に向けて社内教育を施すことが重要になってきます。
サイトの出店方法を見定める
後述しますが、越境ECを始める際、サイトへの出店方法はいくつか存在します。出店方法によって手数料などのコストや販売に必要な工数が変わってくるので慎重に検討する必要があります。自社の事業規模や販売する商品のジャンルによって適切なものを選びましょう。
越境ECでの出品方法
越境ECでの出品方法はいくつか存在します。ここでは4つの方法を紹介するので、自社の事業規模や商品ジャンルに適したものを選びましょう。
自社で越境ECサイトを構築し運営する
元々国内向けに日本語で提供していたサイトを多言語化し、海外からアクセスできるように対応して運営する方法です。
越境ECサイトを自社で構築するので、ITスキルに秀でた人材を確保する必要があり、ほかの方法に比べて参入の際の手間やコストがかかります。
運営にあたっては保守対応なども自社で行う必要があるので、手間やコストがかかるというデメリットはありますが、自社専用にカスタマイズできるのが魅力です。
国内の越境EC対応モール等へ出品する
国内の越境EC対応のモールに出品する方法です。すでに構築されているサイトを利用して越境ECを始めるので、参入する際のコストや手間を最小限に抑えることが可能です。
しかし、サイトの利用手数料を支払う必要があり、同じサイトで越境ECを行うライバルが多いことから、期待どおりの集客効果は見込めない可能性もあります。
海外の大手ECモールに出店する
現地の大手ECモールに出店する方法です。現地で強い影響力のあるモールに出店することで、国内の越境EC対応サイトへの出品と比べて、場合によっては大きな集客を期待できます。
代表例としては、欧米のAmazonやeBay、中国の天猫国際(Tmall Global)や京東全球購(JD Worldwide)が挙げられます。
しかし、現地での法的手続きやECサイトとの交渉が必要なため、国内越境EC対応サイトへの出品よりも難易度が高いのが特徴です。
保税区を活用して出品する
おもに中国向けの越境ECで利用されている方法で保税区を利用するというものがあります。
保税区を活用することで、進出先の国から商品を発送できるので、配送のリードタイムを短縮し、配送コストが抑えられるというメリットがあります。
保税区とは、おもに空港や港湾の近くに設けられているもので、通関を完了するまで関税の徴収を留保された商品を一時的に保管できる倉庫があるエリアのことを指します。
中国へのEC参入については、詳しくは以下の記事をご覧ください。
越境ECを始めるのに必要な英語力はどのくらい?
越境ECを始めるにあたっては、中学生レベルの基礎英会話を理解できれば十分です。
重要なのは、商品の特徴をもれなく伝えることなので、「シンプルに記載する」「ハッキリと答える」といったことを意識しましょう。
多少言語に間違いがあっても、自分の意志がしっかりと相手に伝われば問題ありません。
まとめ:越境ECで自社ビジネスを拡大させよう
海外への販路を獲得できる越境ECは、より多くの顧客獲得を実現できるので、ビジネスの拡大が期待できます。
国によって、法律や規制の種類が異なるのはもちろん、ニーズも異なるので、自社商品の販売可否や向き不向きを事前にリサーチしておくことが重要です。
越境ECを始める際は、本記事で紹介した出品方法の違いを押さえながら、自社の事業規模や商品に適したものを選ぶようにしましょう。
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