棚卸差異がもたらす影響とは?棚卸差異の発生原因から対策まで解説

棚卸差異とは、在庫管理における帳簿と実在庫の数が合わないことを指します。棚卸差異の発生はEC運営にも大きな影響を与えるものです。5%以上の差異率が発生していると、経営にも影響する可能性があります。

そこでこの記事では、棚卸差異とは何かや、原因、対策方法などについてまとめました。財務にも影響する重要な問題ですので、きちんと理解して対策を講じていきましょう。

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棚卸差異とは?

棚卸差異とは、在庫の実際の数量と、帳簿上の数量が合わない状態のことです。つまり、企業が保有する在庫数量と帳簿上の数量にずれがあることを意味します。在庫は、企業の資産として扱われるものです。

そのため、帳簿上の在庫数量が実際の数量よりも多い場合には、実際には所有していない資産を計上することになり、実際の資産よりも多い額で把握してしまうなど、財務管理に悪影響を及ぼすでしょう。

棚卸差異は、とくに在庫を大量に保有している企業でよく発生します。そのため、定期的に棚卸作業を実施し、在庫のズレを発見・修正することが重要です。

棚卸差異には損と益の2種類がある

棚卸差異には、プラスである「棚卸差益」と、マイナスである「棚卸差損」があります。ここからは、棚卸差異の損と益の2種類について、わかりやすく解説します。

実在庫数が少ない場合は「棚卸差損」

棚卸差損とは、データ上の在庫数は100なのに、実際に数えたときに98個しかないなど、在庫数が管理上の数値より少ない場合を指します。この場合は、棚卸差異率が-2%になり、棚卸差損が発生していることになります。企業にとって、差損が出ている状況はよいこととはいえません。

企業の財務に影響する部分になりますので、管理上の数値と実在個数を合わせたうえで、棚卸差損の原因を調査し、改善しましょう。

実在庫数が多い場合は「棚卸差益」

棚卸差益とは、データ上の在庫数は100なのに、実際に数えたときに102個あるなど、実在庫数が管理上の数値より多い場合のことです。この場合、棚卸差異率は+2%になり、棚卸差益が発生していることになります。ただ、実際の在庫数が多いと、過剰在庫になる可能性があります。

この場合、企業は保管コストを負担する必要があるばかりか、在庫が売れ残るリスクもあるでしょう。そのため、正確な在庫数を把握するために棚卸作業を行い、適切な在庫管理を実施することが大切です。

まずは棚卸差異率を知ろう!

棚卸差異がどの程度か把握するためにも、まずは管理上の在庫数と実在個数の差異率を知ることからはじめましょう。ここからは、棚卸差異率の計算方法などについて解説します。

棚卸差異率の計算方法

棚卸差異率は以下の計算方法で求められます。

(実在庫数-帳簿上の在庫数)÷帳簿上の在庫数=棚卸差異率

例えば、実在庫が98個で、帳簿上の在庫は100個と仮定しましょう。

その場合、(98-100)÷100=-0.02となり、2%の棚卸差損が発生していることになります。

棚卸差異率の許容範囲について

棚卸差異率は、少なければ少ないほど理想的です。ただし、差異が多少発生してしまうことはよくあることです。棚卸差異率の許容範囲としては、一般的に5%までといわれています。

5%を超えている場合は、企業の経営にも影響する可能性があるため、差異率を減らせるように、発生原因を追求して改善しなければいけません。実際の改善例については、本記事の後半で解説します。

棚卸差異が発生しやすいポイント

では、どのようなときに棚卸差異が発生しやすいのでしょうか。おもに発生しやすい状況は、以下のとおりです。

  • 出荷時
  • 入庫時
  • 在庫確認時

それぞれの状況について、解説します。

出荷時のミス

棚卸差異が生じやすい原因には複数ありますが、中でも「出荷時のミス」が原因であることは多いです。例えば、出荷指示書にもとづいて商品をピッキングする際に、商品名や数量を誤ってピッキングしてしまったり、梱包作業などの作業中に商品が破損・紛失してしまったりすることがあります。

これらの出荷時のミスが重なると、実際の在庫数と帳簿上の在庫数に大きなずれが生じることになります。

また、出荷の管理方法については、以下の記事でも解説していますので、参考にしてください。

入荷時のミス

商品の入荷時には、帳簿に数値を誤入力してしまうことがあります。また、手書き伝票の場合だと、人によっては読みにくいこともあり、そこから管理ミスが起こりやすいです。さらには、入庫時の確認漏れなどのミスも起こり得るでしょう。これらのミスが原因となり、棚卸差異が発生していることもあります。

これらのミスを防ぐためには、入荷時のチェック体制を整える、もしくは強化することが大切です。

在庫保管時の管理ミス

在庫の保管場所の整理が行き届いていないと、在庫数に差異が生じやすくなります。例えば、アイテムがどこにあるのかわからない、複数の場所で管理されている、といった状況では、正確な在庫数を把握することは難しいでしょう。

在庫データ上は商品があるのに、実際にはどこにあるのかわからない場合、商品の欠品にもつながってしまい、販売チャンスを失うことになってしまいます。そのため、在庫である商品は常に整理整頓し、小さなミスを防止することが大切です。

伝票の処理漏れや入力ミス

商品の伝票の処理を間違えたり、データの入力ミスが原因となったり、棚卸差異が発生したりすることもあります。また、商品にバーコードやQRコードなどの識別用のシールがついていない場合、検品漏れが起こる可能性もあるでしょう。

さらに、ダブルチェック体制ができていないなど、チェック体制に不備があると、入力ミスに気づかずに作業を進めてしまい、棚卸差異が発生してしまうことがあります。

棚卸差異が発生するとどんな悪影響がある?

企業にとって、棚卸差異が発生すると、販売機会の損失やキャッシュフローの悪化、生産効率の低下、顧客満足度の低下など、さまざまな悪影響が生じる可能性があります。以下でそれぞれの影響について解説します。

販売機会の損失が発生する

棚卸差異を放置しておくと、販売機会が損失する原因となる場合があります。例えば、帳簿上の在庫数が実際の在庫よりも多い場合、実際には在庫切れになっている商品を受注してしまうことがあります。その結果、出荷に遅延が生じたり、キャンセルとなったりして損失を被ることがあるでしょう。

また、在庫数が適切に維持できないため、過剰在庫になってしまうこともあります。

キャッシュフローが悪化する

帳簿上の在庫数よりも実際の在庫数が多いことに気づかず、商品を発注してしまうと、過剰在庫が発生する可能性があり、キャッシュフローの悪化につながることがあります。過剰在庫とは、需要以上の在庫を確保してしまっている状態で、利益を生み出しづらく、企業にとっては負担となってしまうでしょう。

そのため、在庫数を正確に把握し、必要な数だけの商品を発注することが重要です。また、売れ残ってしまうと、管理や廃棄に余計なコストがかかってしまうでしょう。

なお、過剰在庫について以下の記事で詳しく解説しています。

生産効率が低下する

棚卸差異は、生産効率の低下を引き起こす原因となる場合もあります。帳簿上には在庫があるはずなのに、実際には見つからない場合、在庫を探す手間がかかります。さらに、在庫がある場所を作業者が認識していなければ、必要なときにすぐに取り出すことができず、生産効率が低下してしまうでしょう。

また、在庫数が合わない場合、その原因を追求するための棚卸しをしなければならず、余計な時間がかかることもあります。

顧客満足度が低下する

棚卸差異があると、顧客満足度に悪影響を与える場合もあります。帳簿上と実在庫数が合わない場合、商品の提供がスムーズに行えず、顧客のもとへ届けるのに時間がかかったり、問い合わせへの対応が必要になったりすることがあります。また、欠品していたことに気づかず受注してしまい、商品をお渡しできないといったトラブルも発生するかもしれません。

そうなると、顧客満足度が低下するだけでなく、企業の信頼度も悪化するでしょう。

棚卸差異が発生しないために行うべき対策は?

棚卸差異を防止するためには、以下のような対策があります。

  • 業務ルール化を徹底する
  • 日次での棚卸しをする
  • みなし出庫を利用する
  • アウトソーシングを利用する
  • 在庫管理システムを活用する

それぞれの対策について解説していきます。

業務のルール化を徹底する

ヒューマンエラーを完全に防止することは困難ですが、ミスを減らすためにはルール作りが欠かせません。原因を追求し、再発防止のアイデアを出すことが重要です。例えば、商品ごとの保管場所を徹底したり、在庫の状況は在庫管理システムで記録したりするなどのルールを決め、従業員が徹底するようにしましょう。

また、マニュアルは、文章だけでなく表や図も取り入れて、一目で理解できるようにすることも大切です。ルールを細かく定め、視覚的にもわかりやすくすることで、ミスを防止できます。マニュアルはスタッフ全員が見られる場所に置くようにしましょう。

日次での棚卸しをする

通常、棚卸しは四半期に一度程度で行われることが一般的です。しかし、棚卸し期間が長いと差異が発生してもすぐには発見できない場合があります。そのため、日次棚卸しを実施し、当日の入出庫の在庫数を確認することで、差異を最小限に抑えられます。この方法は手間がかかりますが、企業によっては大きな負担にはならない可能性もあるでしょう。

また、納品時に同梱されている書類に不備がないか、伝票にミスがないかなど、日々の作業で細かく確認することも重要です。このようにすることで、問題を早期に発見し対処できます。

アウトソーシングを利用する

在庫管理を最適化したい場合、アウトソーシングを検討することも有効です。自社のスタッフだけでは在庫管理に充分な手が回らないないこともあります。そのような場合、アウトソーシングを利用することで、管理業務の負担を軽減できるでしょう。

また、アウトソーシングにより管理業務に自社のスタッフが必要ないため、本来注力するべきメイン事業に従業員を配置できます。

アウトソーシング化については、以下の記事でも解説していますので、参考にしてください。

在庫管理システムを活用する

棚卸差異などのヒューマンエラーはなかなか避けられないものですが、在庫管理システムを活用すれば、在庫の自動連係機能で、棚卸差異を防止できます。また、在庫管理システムを導入することで、リアルタイムで在庫状況を確認できるようになるため、処理漏れを早期に発見でき、棚卸差異を最小限に抑えることも可能です。

在庫管理システムにはさまざまな種類がありますので、自社が必要とする機能を考慮し、コストに合ったものを選ぶようにしましょう。

在庫管理システムについては、以下の記事でも解説していますので、参考にしてください。

まとめ:棚卸しと在庫管理を徹底し、棚卸差異をなくそう!

企業にとっては、棚卸差異を減らすことは重要です。ミスが起こりやすい場所は入荷・出荷時や伝票処理、在庫保管時など多岐にわたります。差異が大きい場合は、原因を調べるための手間もかかってしまい、生産性も悪化してしまうでしょう。

そのため、在庫管理システムなどを活用し、差異率をできるだけ抑えるよう心がけていきましょう。ミスを起こしにくい環境を整えることが大切です。

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