売上分析は、企業として売り上げ目標の達成に向けて欠かせないものです。現状を把握し、過去の売り上げデータを把握することで、今後の売り上げ予測をより正確に行えます。ただし、売上分析には、さまざまな手法やツールがあるため、それぞれの特徴を理解して活用することが重要です。
そこで今回は、売上分析を行う流れや代表的な手法について解説します。活用できるツールについても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
売上分析とは?
売上分析は、企業が製品やサービスの売り上げデータを分析することであり、業績評価や市場動向の把握、販売戦略の改善などに役立ちます。しかし、単に売上分析を行うのでなく、なぜ分析が必要なのかを理解することが重要です。
初めて行う場合は、正しい分析方法の理解や注視すべきポイントの把握から始める必要があるでしょう。また、適切な売上分析を行うためには、まずは企業としての問題点を知ることも重要です。
「売れ行きがよくない商品があって困っている」「特定の商品が売れやすい時期を把握したい」などの問題点を明確にしたうえで、売上分析を行いましょう。
売上分析をする目的
売上分析の目的は、現在の状況を把握し、課題を明確にすることです。売り上げ目標値は事前に設定していることが一般的ですが、その目標に届かない場合は、なんらかの問題点があると考えられます。そこで、データ分析を行いながら、どこに問題があるのかを明確にしていくのです。
例えば、売り上げ目標に達していない原因が商品やサービスにあるのか、販売する時期にあるのかなどといった仮説を、売上分析によって検証します。その後、問題点の改善とともに再度売り上げ目標を設定することで、より目標に近づく施策を考えられるのです。
売り上げを伸ばすためには、まずは売上分析などのデータ分析による現状把握を行い、適切な施策を講じましょう。
売上分析を行う5つのメリット
では、売上分析を行うと、どのようなメリットがあるのでしょうか。おもなメリットは以下のとおりです。
- 収益性の高い商品や顧客の把握
- 市場動向の理解
- 適切な売り上げ目標の設定
- 販売促進活動の効果検証
- 営業担当者のモチベーション維持
それぞれのメリットについて、詳しく説明します。
収益性の高い商品や顧客が把握できる
売上分析によって、商品やサービスごとの収益性を明らかにできます。商品やサービスによって売上高や利益率は異なるため、どの商品やサービスが収益につながりやすいのかを理解することは、売り上げアップにつながるでしょう。
「20%の要素が全体の80%の成果を生み出している」というパレートの法則が示すように、売り上げの8割は2割の製品によって生み出されている背景があります。つまり、扱っている商品やサービスの中には、よく売れる(=売り上げに大きく貢献する)ものとそうでないものがあり、どの商品やサービスが収益に貢献するのかを把握し、顧客にアプローチすることが、とても大切なのです。
市場の動向を理解できる
売上分析は、市場の動向を理解するために非常に有用な手段です。例えば、特定の業界において、どの商品やサービスの需要が高まっているかを詳細に分析することで、新しい商品やサービスの開発に役立ちます。
さらに、売上分析はマーケティング活動にも貢献します。競合他社よりも優位に立つためには、データにもとづいた戦略を立てることが必要です。売り上げデータを分析することで、市場動向や顧客嗜好などのトレンドを把握し、それを踏まえた戦略を立てられます。
これによって、販売促進の効果や広告費の効率化など、マーケティング活動の改善にもつながるでしょう。成功を収めるためには、売上分析を積極的に行い、市場の動向を正確に把握し、戦略を立てていくことが大切です。
適切な売り上げ目標の設定ができる
売り上げ目標を設定する際には、単に数字を設定するだけではなく、売り上げ実績や時期による変動、顧客ニーズなどの情報をもとに適切な目標を設定する必要があります。売上分析を行うことで、これらの情報を把握できるため、具体的な売り上げ目標の設定に役立つでしょう。
逆に、分析を疎かにし、目標が大きく外れていると、過剰在庫を抱えてしまうなどといったマイナスになることもあります。しかし、売上分析を行えば、適切な目標を設定するだけでなく、在庫数を減らすなどといった対策も事前に行えるでしょう。
販促活動の効果検証ができる
多くの企業が、販促活動を積極的に行っています。これは、売り上げを伸ばすために欠かせない活動です。しかし、販促活動の効果を正確に把握できていないと、リターンよりコストが上回ってしまうこともあります。
例えば、イベントに出店した際に、反響がどの程度あったのかを正確に把握できていなければ、次のイベントに向けた具体的な改善策が見えてこないでしょう。このような場合でも、売上分析を行うことで、販促活動の効果を把握できます。
販促活動前後の売り上げの変化を分析することで、その活動が売り上げにどれだけ貢献したのかが見えてきます。これによって、販促活動の見直しや改善を行いつつ、販売につなげていくことが可能です。売上分析を積極的に活用して、販促活動の効果を最大化しましょう。
なお、ECサイトの集客については以下の記事で詳しく紹介しています。
営業担当者のモチベーション向上に役立つ
売上分析を行うことで、営業担当者のモチベーション向上にも役立ちます。売上分析を通じて、営業担当者の強みや弱みを明確にし、改善するためのアドバイスができるでしょう。
売上分析によって、企業の目標や具体的な売り上げデータから目標を設定することで、営業担当者にとっても取り組みやすくなり、モチベーションの向上につながるでしょう。さらに、売上分析によって、営業担当者の成果や実績を可視化し、適切な評価や報酬に反映させることもできます。
売上分析をする際の流れ
売上分析をする際の流れは、以下の3ステップです。
- 売上分析を行う目的の明確化
- 目的に沿ったデータ収集
- データの可視化、分析
それぞれどのような流れで進めていくのか詳しく解説します。何から始めたらよいのか迷っている人も、この流れで進めてみてください。
①売上分析を行う目的を明確にする
売上分析を行う際には、まず目的を明確化することが重要です。「営業担当者の強みや弱みを知りたい」「顧客の売り上げ貢献度を知りたい」「データをもとにマーケティング戦略を立てたい」など、目的を具体的に決め、可視化しましょう。
曖昧な目的で分析を進めてしまうと、何に注目すべきかが見えず、分析方法も決められません。しかし、目的を明確化すれば、必要なデータや指標を見極め、正確な分析を行えます。売上分析を行う際には、まず目的の明確化から始め、効果的な分析を行いましょう。
②目的に沿ったデータを収集する
売上分析の次のステップとして、目的に沿ったデータを収集することが重要です。目的を明確化した後は、どのようなデータが必要なのかを決め、それにもとづいてデータを収集します。
例えば、個別の顧客の売り上げ貢献度を知りたい場合は、顧客の購入履歴や購入金額などのデータを収集する必要があるでしょう。目的に応じた正確なデータを収集し、分析に必要な情報を整理することで、より有益な分析が可能となります。
③データを可視化し、分析する
データ収集が終わったら、次にそのデータを可視化し、分析しましょう。データを可視化することで、売り上げの傾向やパターンが見えてきます。ExcelやGoogleスプレッドシートなどの表計算ソフトを使って、グラフやチャートを作成すれば、より分析しやすくなるはずです。
売上分析するために具体的な6つの分析手法
ここからは、売上分析のために覚えておきたい、具体的な分析手法について解説します。おもな分析手法は、以下のとおりです。
- ABC分析
- RFM分析
- 重回帰分析
- アソシエーション分析
- デシル分析
- クロス集計
まずは、それぞれにどのような違いがあるのか解説していきます。
ABC分析
ABC分析は、パレートの法則をもとにした売上分析手法の1つです。この手法では、商品やサービスなどの商材を、その売り上げが全体のどの程度を占めているかによって、A、B、Cの3つのグループに分けます。Aグループは全体の売り上げの約8割を占める売れ筋商品、Bグループは約15%、Cグループは残りの約7%を占める商品のような形です。
この分析により、貢献度が高いAグループの商品を重点的に扱うことで、売り上げ向上につながることが期待できます。一方で、貢献度が低いCグループの商品は廃版や取り扱いをやめることで、コスト削減につながることもあるでしょう。ABC分析は、売上分析を通じて商品の効率的な取り扱いを考える上で、非常に有用な手法となります。
RFM分析
RFM分析は、顧客を以下3つの指標にもとづいてグループ分けする売上分析手法です。
- 最新購入日(Recency)
- 購入頻度(Frequency)
- 累計購入金額(Monetary)
この分析により、購入頻度が高かったにもかかわらず最近は購入していない顧客がいる場合、競合他社で商品を購入している可能性が高いことがわかります。そのため、このような顧客に再び商品を購入してもらうための対策が必要となるでしょう。
また、購入頻度が高いが単価が低い顧客も存在します。この場合、単価を上げるための施策を考える必要があります。RFM分析は、売上分析を通じて、顧客の嗜好や優先順位を理解する上で非常に有用な手法です。
重回帰分析
重回帰分析は、ある結果(例:今月の売り上げ)を説明する際に、関連する複数の要因(例:顧客単価、顧客数など)のうち、どの要因がどの程度結果を左右しているかを数値化し、それをもとに将来を予測しようという統計解析方法です。
例えば、売り上げが低迷している場合、その原因が何であるかを特定できず、対策を打つことが困難な場合があります。しかし、顧客数の減少や単価の低下など、売り上げに関連性の高い複数の要素を分析することで、問題の原因を特定することが可能です。
この分析結果にもとづいて、どのような施策を打てば売り上げが向上するのかを判断し、来期の売り上げ予測も立てられるでしょう。重回帰分析は、売上分析を通じて、問題の原因を特定し、売り上げ向上につながる施策を考える上で非常に有用な手法です。
アソシエーション分析
アソシエーション分析は、「ある事象が発生すると、それに関連して別の事象も発生する」という物事の相関関係を見つけ出す手法です。
例えば、ある商品と一緒に購入される頻度が高い別の商品がある場合、それらの商品には関連性があると考えられます。この関連性を見つけることで、商品のセット販売や、商品を隣接した陳列棚に並べることで販促につなげるなどといった施策を打つことが可能です。
また、一見関連性がないと思われる商品でも、ついで買いとして一緒に購入されることが多い商品がある場合、それらの商品の関連性を見出すことで、商品開発のヒントになります。
商品の関連性を理解し、販促施策や商品開発につなげる上で有用な手法です。
デシル分析
デシル分析とは、顧客分析の一種で、すべての顧客を購入金額順に10グループに分け、各グループの購入金額の合計を出し、構成比を分析する顧客分析手法です。デシルという言葉は、ラテン語で10等分を意味する言葉から来ています。
この分析手法は、購入した金額のみを調べる簡易的な分析方法であり、顧客の購買力を把握する上で有用な手法の1つです。購入金額だけでなく、購入日や購入頻度も分析対象とするRFM分析と比較しても、より簡単に分析できます。
デシル分析は、売上分析を通じて、顧客の購買力を理解し、販促施策や商品開発につなげる上で有用な手法です。
クロス集計
クロス集計は、売り上げデータの中から2つまたは3つの項目を選択して、それらのデータを掛け合わせて分析する方法です。例えば、購入日や購入金額、商品などのデータを集計して分析する場合、顧客名や金額といったデータを掛け合わせることで、単純集計では見えてこない事実が見えてきます。
クロス集計は、どの商品を誰が、いつ、どれだけ購入しているのかといった、より詳細なデータを把握するために非常に有用な手法です。これにより、顧客の嗜好や購買パターンをより正確に把握し、売り上げ向上の施策を立てられます。
クロス集計は、売上分析を通じて、より詳細なデータを把握し、販促施策や商品開発につなげる上で非常に有用な手法です。
売り上げデータの分析に活用できるツール
最後に、売り上げデータ分析に活用できるツールを紹介します。おもに活用できるツールは以下のとおりです。
- Excel
- BIツール
それぞれの特徴を把握し、分析するデータよって使い分けていきましょう。ツールによっても得意分野があるので、まずは理解することが大切です。
Excel
Excelは、売り上げデータの分析に活用できるツールの1つです。表計算やグラフを作成することが容易であり、ピボットテーブルを利用することで、地域別などで売り上げを集計できます。
Excelは、初心者にも使いやすいツールです。
相関関係などのデータをグラフにまとめやすく、視覚的にデータを把握できるでしょう。また、Excelはビジネスシーンでも広く使用されており、多くの人が使い方を知っているため、共同作業や情報共有にも適しています。
しかし、膨大なデータ処理にはあまり適していないため、大量のデータを扱う場合は、より高度な分析ツールを使用することがおすすめです。それでも、Excelは売上分析において非常に有用なツールであり、中小企業や個人事業主など、手軽にデータ分析を行いたい人にとってはとくにおすすめのツールとなります。
BIツール
BI(ビジネスインテリジェンス)ツールは、日々のビジネス活動で蓄積されるデータを分析し、ビジネスの意思決定に活用するためのツールです。
BIツールは、多様なデータソースからのデータを一元的に管理し、可視化できるツールです。膨大なデータの中から必要な情報を取り出し、簡単に分析できるため、迅速かつ正確な意思決定を支援できます。
BIツールは、企業にとって貴重な戦略ツールとなります。企業の競争力を強化し、より効率的かつ効果的なビジネス活動を実現するために役立てられるでしょう。
まとめ:売上分析で戦略的に売り上げを伸ばそう!
売上分析は、売り上げを伸ばし、事業を拡大していく上で欠かせない手段です。売り上げデータを分析することで、自社のビジネスを客観的に評価し、改善のための具体的な施策を立てられます。また、売上分析には多様な手法があり、適切な手法を選び、データを正しく解釈することでより有効な戦略を立てられるでしょう。
適切な手法やツールを選んで活用し、より効果的な戦略的ビジネスを展開していきましょう。
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複数の店舗を運営している場合、それぞれの店舗ごとに売り上げデータを収集して分析するのは手間がかかります。しかし、ネクストエンジンを使えば、全店舗のデータを一元管理することが可能です。これにより、各店舗の売り上げ状況を簡単に把握できるだけでなく、特定の商品の売り上げ状況なども確認できます。
また、ネクストエンジンは受注管理・在庫管理・商品登録といったメイン機能だけでなく、必要に応じてアプリで機能を追加することで、柔軟に機能拡張することもできます。
分析アプリなどを追加することで、さらに効率的に、詳しく分析を行うことが可能です。売上分析は、顧客ニーズの把握や販促施策の立案に大きな役割を果たすため、より効率的な分析ができるようにツールを活用しましょう。
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