ファッション・アパレル分野はEC化率も高く、EC業界の中でも成長が期待されるジャンルです。
本記事ではアパレル・ファッションのEC市場の推移やその成長の背景から、今後の課題や解決策について解説します!
アパレルECの市場規模はどれくらい?
まずは、近年のアパレル市場の規模を見ていきます。ここ数年、新型コロナウイルスの流行でどの業界も大きな影響を受けましたが、アパレル市場ではどのような傾向が見られたのでしょうか?
2022年の国内アパレルの総小売市場規模は8兆591億円、前年比105.9%(矢野経済研究所「国内アパレル市場に関する調査を実施(2022年)」より)となっており、前年から増加しているものの、コロナ禍以前の水準(2019年は9兆1,732億円、2018年は9兆2,349億円)には戻っていない状況です。
一方、経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」(2024年9月報告)によると、衣服・服飾雑貨等のEC市場規模は、2023年は2兆6,712億円で前年比4.76%増加し、市場規模は「食品、飲料、酒類」の2兆9,299億円と「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」の2兆6,838億円に続く規模です。また売り上げに対するECの割合である「アパレルEC化率」は2023年は22.88%でした。
以上から、アパレル市場全体ではコロナ禍以前から横ばいで推移しており、コロナ禍で減少、その後は一定の回復は見られるものの完全ではない状態で、一方、アパレルECは他分野と比較しても市場規模が大きいことがわかります。
アパレルのEC化の加速の理由
アパレル市場全体では横ばい傾向が見られ、その一方でEC化が加速していることがわかりました。ではその背景にはどういったものがあるのでしょうか?
おもな理由は3つあります。
- SNSの普及・販売チャネルの多様化
- ECツールの簡便化・普及
- コロナによるオンラインショッピングの需要の増加
以下で詳しく解説します。
SNSの普及・販売チャネルの多様化
まずはSNSの普及や販売チャネルの多様化が挙げられます。
近年スマホで手軽にネットショッピングすることが一般化し、欲しいものがどこでも好きなタイミングで購入できるようになりました。
Appliv TOPICSの2023年の調査によると、オンラインでよく購入する商品ジャンルについては、女性や10~20代では「衣類」が上位1~2位に入っています(Appliv TOPICS「オンラインショッピングに関するアンケート」)。
また、アパレル商品はInstagramやTikTokなどSNSと相性がよいことも大きなポイントです。
SNSインフルエンサーの服装には注目が集まり、とくに若年層では「インスタで着ていた服と同じものがほしい」などと、SNS上で見かけた商品をそのまますぐに購入する流れも珍しくありません。
こういったファッションに関心を持つユーザーが、スマホからSNS経由でアパレルECを利用していることがアパレルEC成長の背景の1つと言えるでしょう。
ECツールの簡便化・普及
近年はECモール・カートの選択肢が増え、自社で一からECシステムを構築しなくても、低価格での出店が可能になり、ECに出店するハードルが下がってきています。
また、複数のECショップを運営したり、実店舗とEC店舗を運営するといった多店舗運営についても、受注・在庫を一元管理できるシステムを導入することで、効率よく運営ができるようになっています。
そういったECツール導入のハードルが下がり、普及してきたことも、アパレルECに参入する事業者が増える要因になっています。
コロナによるオンラインショッピングの需要の増加
新型コロナウイルス流行以前であれば、オンラインでのアパレル商品購入に対して「サイズ感や色味を実際に手に取って確かめたい」と、EC利用に消極的で、実店舗での購入を求める消費者は多かったと思います。
しかし、コロナ禍の一時期に外出を控えるようになり、以前は実店舗で購入していた層もオンライン利用に流れることで、オンラインショッピング全体の需要が高まりました。
外出制限等が解除された後も、一度ECで購入経験がある場合、店舗に足を向けなくても購入できる利便性を実感できているため、その後のEC利用継続・需要の拡大につながっていると考えられます。
アパレルECの種類とその特徴
ひと口に「アパレルEC」と言ってもいくつかの種類に分けられます。それぞれの特徴を見ていきましょう。
ブランド・メーカー直営(D2C)型
実店舗を持つブランドやメーカーが自社で運営しているタイプのECサイトです。
自社サイトのため、ブランドの世界観に沿ったサイトを構築することができ、キャンペーン等のマーケティング・プロモーション施策も自社で自由に設定できます。
ただし、自由度が高い分、自社でゼロから集客をする必要があるため、認知度の低いブランド・メーカーにとっては集客面でのハードルが高い点がデメリットです。
モール型
Amazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングをはじめとしたECモールに出店するタイプです。ECモールとは、オンライン上のショッピングモールのことで、1つのモールに複数のショップが出店しています。アパレル専門のモールではZOZOTOWNが有名です。
出店料等の手数料はかかりますが、モールが持つ集客力を利用できるため、ECをはじめたばかりの店舗や知名度の低いブランドの場合には、はじめから一定の集客が見込めることがメリットです。
ただし、店舗の差別化が難しく、競合他社が多い場合には埋もれてしまいがちで、価格競争になる可能性もある点には注意が必要です。
個人取引(CtoC)型・レンタル型
近年ではメルカリやラクマといったフリマアプリで個人でも手軽に出品できるようになったため、BtoB取引だけでなく、個人間でのEC取引(CtoC)も増加しています。
経済産業省の調査によると、2021年のこうしたフリマアプリ等のCtoC取引の市場規模は前年比12.9%増の2兆2,121億円と成長しています(経済産業省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」)。
また、アパレル・ファッション分野では、毎月数着の服をレンタルできる月額制のサブスクリプションサービス「airCloset」などのレンタルECの台頭も見られます。
アパレルECのトレンド
コロナ禍を経て、人々の意識や行動は以前と比べて大きく変化しましたが、アパレルECではどのような変化があったのでしょうか?
アパレルECのトレンドを紹介します。
サステナブルなファッション
アパレル業界はファストファッションの流行で、大量生産・大量消費のスタイルが広まり、それによって大量の商品の廃棄が発生するようになりました。
しかし近年、SDGsが注目されるようになり、消費者の間にも持続可能な社会の実現のため、製品や資源を無駄にせず、廃棄を最小限にしたいという意識が高まっています。
コロナ禍での行動制限中に、「外出が減ったのだから、服を頻繁に買う必要はない」という消費行動の変化を経験したことも、そうした意識の変容を加速させたと考えられます。
また、2021年には伊藤忠商事やユナイテッドアローズなどの11企業が、サステナブルなファッション産業の推進を目的とした「ジャパンサステナブルファッションアライアンス(JSFA)を立ち上げました。2023年8月現在では61企業のファッション・繊維企業が会員となっており、サステナブルファッションへの取り組みは今後も進んでいくでしょう。
オンライン接客
コロナ禍では外出を自粛する消費者が増え、その結果、今までオンラインショッピングの習慣はあっても衣服は実店舗で買っていた層が、EC店舗に流れる傾向も見られるようになりました。
アパレルEC事業者側でも、コロナ禍で実店舗の休業やEC店舗需要の高まりを受けて、オンラインでの接客や、ショップ店員と購入前にチャットで相談ができるなどの新しい試みをする事業者が増えました。
また、ECサイト上の商品画像をより実物をイメージしやすいように複数掲載したり、動画を掲載したり、商品よりユーザーに分かりやすいように工夫するなど、ECサイトの強化に力を入れるようになっています。
ライブコマース
ライブコマースとは、ECサイトとライブ配信を組み合わせた販売形態です。
リアルタイムで配信される動画で商品を紹介し、コメント機能を通じてユーザーの質問にもその場で答えていくことができます。通常のECサイトに比べてインタラクティブな接客が可能なため、コロナ禍をきっかけにライブコマースへ再度注目が集まりました。
ECサイトでの画像や商品説明文だけでは、商品購入に不安を感じるユーザーは以前から一定数存在しており、そういった従来のEC販売でカバーできなかった層へも訴求できるため、今後も導入が増えていくと予想されます。
アパレルECの課題と解決策
これまでアパレルECのトレンドを見てきましたので、ここからはアパレルECの課題や解決策はどんなものがあるのかを解説します。
サイズがわかりにくい・着用イメージがしずらい
ECサイトでは試着ができません。そのため、ユーザーはサイト上での表示をもとに、自分に合うと思われるサイズを選択しますが、実際に着てみると合わなかった、ということは珍しくありません。
また、生地の色や質感は画面上で正確に伝えるのは難しく、「想像していた商品と違った」と返品につながってしまうこともあります。
こうしたミスマッチを防ぐため、ECサイト上の着用写真のモデルを複数パターン用意し、それぞれの身長や体形でのサイズ感が分かるようにしたり、着用動画を掲載するなど、ユーザーがよりイメージしやすい表示に努めることが大切になってきます。
ユニクロのオンラインストアの「MySize ASSIST」では、身長や体重等を記入し、スマホのカメラで体型計測することで、AIがおすすめのサイズを提案してくれるサービスを行っています。
北欧、暮らしの道具店では、スタッフ着用レビューを作成し、身長・体型の異なるスタッフが実際に着用して感じたコメントを掲載し、ユーザーがサイズを選ぶ際に選びやすい工夫がされています。
EC店舗と実店舗の融合
実店舗とEC店舗を両方運営していても、実際の運営は全く別に管理されている場合があります。
今後の事業成長のためには、実店舗とEC店舗の相乗効果を狙う必要があります。例えば、実店舗とECの顧客データの統合をすることで、ECサイトの購入履歴を踏まえて実店舗で接客したり、逆に実店舗での購入履歴をもとにECサイトのおすすめ商品を表示するなど、より顧客のニーズに近い対応ができるようになります。
また、実店舗ならではの強みを生かし、店舗受け取りサービスを導入するなど、ユーザーの利便性を高めることも効果的です。
O2O(Online to Offline:オンラインからオフラインへ消費者の行動を促す販売戦略)については以下の記事でも解説していますので、こちらもご参考ください。
サイトの認知度アップと集客
取り扱いブランドの認知度が高い場合を除いて、自社サイト運営で一番の課題となるのは集客でしょう。
モール型の出店であれば、モール自体の集客力を利用できるため、集客ハードルが低くなります。自社ECサイトならではの作り込んだサイトの世界観や、独自のサービスでブランディングをしつつも、認知度を高めるためにモールに複数出店していくことも有効な手段となります。
ECモールや自社EC・実店舗との在庫の一元管理
アパレル商品は商品のサイズやカラーなどのバリエーションも多く、季節やトレンドに沿った商品展開をしており、取り扱い商品数は多い傾向があります。加えて、サイズ交換などユーザー側の理由による返品もあります。
そのため、実店舗に加え、自社ECや複数モールへの出店を行い、多店舗化戦略を進めていく上で大きな課題となるのが在庫管理です。
実店舗とEC店舗間で在庫のズレが発生し、欠品を起こしてしまうと、機会損失を招くだけでなく、顧客満足度の低下にもつながってしまいます。
アパレルECの業務効率化なら一元管理システムがおすすめ
そこでアパレルECにおすすめなのが一元管理システムの導入です。
一元管理システムは自社EC、モール、実店舗など、複数の店舗をまとめて1つの管理画面で受注・在庫を管理することができます。
受注処理や在庫管理作業を効率化・自動化することで、新しいスタッフを増やさずとも、スタッフの負担が軽減されます。自動化によって生まれた時間の余裕で、新商品の開発や販売促進キャンペーン施策の実施などに注力することができます。
まとめ 効率よくアパレルEC運営して売上拡大しよう!
本記事ではアパレルECの市場規模やトレンド・課題について解説しました。コロナ禍を経て、ECのトレンドにもオンライン接客やライブコマースなど、大きな変化がありました。
そういった新しい変化に今後も柔軟に対応していくためにも、在庫管理といったバックヤード業務の効率化・自動化は不可欠です。
この機会に一度、一元管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
効率的な多店舗運営を実現し、売上アップや事業拡大を目指していきましょう!
アパレルECの多店舗化にも実店舗にも!一元管理システムなら「ネクストエンジン」
EC一元管理システム「ネクストエンジン」は、アパレルEC事業者の皆様の日々の運営をラクにする機能がそろっています。
ネクストエンジンのおもな機能は以下のとおり。
など
ネクストエンジンなら、アパレル商材に多いセット商品の対応も、セット商品と単体商品の在庫を自動連携できたり、セールやシーズンごとの商品ページの編集も一括で登録できるなど、日々の運営をもっとラクにできます!
実際にネクストエンジンを導入されたアパレル事業者様からは「バックヤード業務が減ることで、ZOOMでの接客、ライブコマースなど、新しいチャレンジに人員を割けるようになりました。社員は以前よりイキイキとしている印象です」
との声をいただいています。
以下からネクストエンジンの在庫管理についての資料が無料でダウンロードできます。ぜひお気軽にご利用ください。
【本記事の監修者】
山本 祐士
NE株式会社 コンサルティング事業部 マーケティングマネジメント部 コンサルタント
ファッション業界に3社計17年従事。販売、VMD、営業、バイヤーを経て自社ECサイトの立ち上げ、ディレクションを担当。サイト構築からフロント業務/バックエンド業務まで一気通貫して行う。2023年にNE株式会社にECコンサルタントとして入社し、業界問わず、中小〜大手企業様と幅広くコンサルティングを担当。