卸売がEC利用するメリットは?成功のポイントや重視すべき機能を解説

結論:卸売ECを成功させる最大の鍵は、BtoB特有の「複雑な商習慣」をどこまでシステムで自動化・一元管理できるか、に集約されます。
「毎朝、山のようなFAX注文を入力するだけで午前中が終わってしまう……」
「電話での在庫確認や納期回答に追われ、本来の営業活動ができていない」
卸売業界が抱えるこうしたアナログ業務の限界を突破するには、取引先ごとの掛け率設定やクローズド運用をシステム化し、さらには「EC受注」と「アナログ受注(FAX・電話)」のデータをスマートに統合することが不可欠です。
本記事では、卸売業がEC化で得られる劇的なメリットから、失敗しないシステム選定のポイント、そして現場のパニックを防ぐ一元管理の手法まで、EC運営のプロの視点で徹底解説します。
<この記事を読んでわかること>
- 卸売業界の最新EC動向: EC化率37.5%突破。なぜ今「Web受発注」への移行が急務なのか
- EC導入の5つのメリット: 業務効率化、新規開拓、インボイス制度・電帳法への対応まで
- 失敗しないシステム選び: 「自社BtoBサイト」と「卸売りモール」の判断基準と使い分け
- BtoB特有の必須機能: 取引先ごとの掛け率設定やクローズド運用の実現方法
- 成功の秘訣:「FAX・電話注文」と「EC注文」をリアルタイムに在庫連動させるコツ
卸売とは?メーカーと販売店をつなぐBtoBビジネス
卸売業は、メーカーと販売店をつなぐ「流通の要」としての役割を担っています。メーカーに代わって在庫を保有し、販売店が必要な時に必要な分だけ仕入れられるよう調整する、いわば「サプライチェーンの心臓部」です。
しかし今、その現場では「受注業務のデジタルシフト(EC化)」が急速に加速しています。
卸売業界のEC化率は37%を突破!加速するDXの波
経済産業省の調査(令和4年度)によると、卸売業のEC化率はすでに37.5%に達しています。これは、全産業の中でも非常に高い水準です。
コロナ禍を経て、「対面営業」や「FAX・電話受注」のみに依存するリスクが浮き彫りになったことで、多くの企業がWeb受発注への切り替えを急いでいます。現在、卸売業界のEC化を後押ししている主な要因は以下の通りです。
- 深刻な人手不足: アナログな入力作業に人員を割く余裕がなくなっている
- 法改正への対応: インボイス制度や電子帳簿保存法により、デジタル管理が「必須」の時代に
- 取引先の世代交代: 「電話やFAXではなく、スマートフォンで手軽に発注したい」というニーズの増加
つまり、現代の卸売業界においてECサイトの導入は、単なる業務効率化に留まらず、「企業の競争力を維持するための不可欠な戦略」となっているのです。
BtoB EC市場規模・EC化率の推移(業種別)
経済産業省の調査に基づき、主要な業種のEC化率と市場規模をまとめています。特に卸売業は、全産業の中でも巨大な市場規模を誇っています。
| 業種(中分類) | 2021年 EC化率 | 2022年 EC化率 | 2022年 市場規模(億円) | 対前年比 |
| 卸売 | 33.5% | 37.5% | 1,043,923 | +10.1% |
| 製造(食品) | 67.5% | 71.0% | 290,480 | +12.3% |
| 製造(電気・情報関連) | 62.4% | 65.5% | 389,019 | +8.0% |
| 建設・不動産業 | 15.6% | 16.9% | 272,391 | +13.5% |
| 運輸 | 22.8% | 25.1% | 134,705 | +16.0% |
| 合計(その他を除く) | 35.6% | 37.5% | 4,202,154 | +12.8% |
(出典:令和4年度 電子商取引に関する市場調査 P.94を参考に作成)
卸売業がECサイトを導入する5つのメリット

卸売業がECサイトを導入するメリットは、単なる「ネット販売」に留まりません。事業者・顧客の双方が抱えるアナログ業務の課題を解決する、5つの大きなメリットを解説します。
メリット1. 24時間365日の受注体制で「機会損失」を防ぐ
従来の電話やFAXによる受注は、自社の営業時間に縛られていました。ECサイトを導入すれば、顧客は深夜や早朝、店舗の閉店後など、好きなタイミングで発注が可能になります。 「今すぐ注文したい」という顧客のニーズを逃さないため、売上の取りこぼしを防ぐことができます。
メリット2. アナログ業務の自動化による「劇的な業務効率化」
電話の聞き取りやFAXの転記作業は、膨大な工数がかかるだけでなく、入力ミスなどのヒューマンエラーを招きます。 EC導入により、顧客が入力したデータがそのまま受注データとして蓄積されるため、事務作業の工数を大幅に削減できます。空いた時間を、本来の営業活動や顧客フォローに充てることが可能になります。
メリット3. 営業担当が「新規開拓」や「提案」に専念できる
これまでは既存顧客の注文処理や在庫回答に追われていた営業担当も、受注のデジタル化によって時間が生まれます。 立地の制約なく全国の顧客へアプローチできるだけでなく、蓄積された購入データを分析して「次に売れる商品」を提案するなど、より付加価値の高い営業活動へとシフトできます。
メリット4. インボイス制度・電帳法へのスムーズな対応
手書きの伝票やExcelでの管理では、インボイス制度(適格請求書)や電子帳簿保存法への対応に多大な労力がかかります。 システム化されたECサイトであれば、適格請求書の自動発行やデータの電子保存が容易になり、コンプライアンス遵守と事務負担の軽減を同時に実現できます。
メリット5. 取引先の利便性向上による「顧客満足度」の向上
顧客である販売店側にとっても、「いつでも在庫状況が確認できる」「スマホから簡単に再注文できる」といった利便性は、取引を継続する強力な動機になります。 また、「卸売向けショット(単発取引)」を希望する新規顧客にとっても、Webからすぐに注文できる環境は大きな魅力となり、取引のハードルを下げることができます。
卸売業がECサイトを導入する方法2つ
卸売がECを導入する方法を見ていきましょう。導入には自社でECサイトを立ち上げる方法と、既存の仕入れ・卸売サイトに出店する方法の2種類が存在します。
方法1. 自社でECサイトを立ち上げる
自社商品を取り扱うECサイトを自社で構築し、運用する方法です。自社でECサイトの構築や運用を行うので、サイト構築に詳しい人材がいれば、デザイン性の高いバナーで集客するなど、取り扱う商品に合わせた自由度の高い運用が可能です。
自社でECサイトを構築・運用できるエンジニアがいなければ、外部企業に委託するのもよいでしょう。
しかし、オリジナルのECサイトを構築し運用を行う分、ECサイトの運用・保守に多くのコストを割くことになります。
方法2. 既存の仕入れ・卸のサイトに出店する
販売店が商品を仕入れるために利用している仕入れ・卸のサイトに出店すれば、そのサイトを通じて商品の購入が行われます。既存の仕入れ・卸のサイトに出店するメリットは、すでに構築されているプラットフォームを利用できるため、自社でECサイトを構築・運用するよりも費用を抑えることが可能です。
また、開発に期間がかかる自社サイトと違い、既存のECサイトと自社商品を連携するだけで出店が行えるので、ECサイトの導入をスムーズに行うことも可能です。
しかし、自社でECサイトを構築することと比べると運用の自由度は低く、ライバルが多く存在するという点に注意しましょう。
卸売業がECサイト選定で失敗しないための4つの重要ポイント
卸売業のEC化において、一般的なBtoC向けのシステムを選んでしまうと「現場の運用が回らない」という事態に陥りかねません。卸売特有の複雑な商習慣に対応できるか、以下の4つの視点で選定しましょう。
ポイント1. BtoB特有の「出し分け機能」が充実しているか
卸売では、取引先ごとに販売価格や閲覧できる商品を変えるのが一般的です。以下の機能が標準搭載されているか、必ず確認しましょう。
- 取引先ごとの価格設定(掛け率設定): A社は3掛け、B社は5掛けといった設定が可能か
- クローズドサイト運用: ログインした取引先だけに在庫や価格を見せる機能
- 発注ロット制限: 「1ケース(12個)単位」など、卸特有の注文単位を設定できるか
ポイント2. 自社の運用に合わせた「カスタマイズ性」と「外部連携」
卸売業務は、すでに使っている基幹システムや在庫管理ツールとの連携が不可欠です。
- 一元管理システム(ネクストエンジン等)との連携: EC注文とFAX注文の在庫をリアルタイムで同期できるか
- 柔軟なカスタマイズ: 独自の配送ルールや支払い条件(掛売・後払い)をシステムに反映できるか
ポイント3. BtoB導入実績と「業界特有のノウハウ」があるか
自社と同じ業種(食品、アパレル、雑貨など)での導入実績があるかを確認しましょう。BtoBに強いシステム会社なら、商慣習特有の「落とし穴」を熟知しているため、導入後のトラブルを防げます。
ポイント4. 運用開始後の「伴走型サポート」の有無
システムは導入して終わりではありません。「取引先へのログイン情報の案内はどうすればいいか?」「特殊な注文が来た時の対応は?」など、現場の疑問に即座に答えてくれるサポート体制があるかどうかが、EC化成功の分かれ道になります。
どっちを選ぶ?「自社EC」vs「卸売りモール」比較表
卸売業がEC化する際、大きく分けて「自社でサイトを作る」か「既存のモールに出店するか」の2つの選択肢があります。
| 比較項目 | 自社BtoB ECサイト | 卸売りモール(仕入れサイト) |
| 主な目的 | 既存顧客の利便性・業務効率化 | 新規顧客の開拓・販路拡大 |
| 顧客対応 | 取引先ごとの個別価格設定が可能 | モール規定の価格設定が主 |
| 手数料 | 月額固定費が中心(利益率が高い) | 売上手数料が発生する場合が多い |
| 集客力 | 自社で集客(営業)が必要 | モールの集客力を活用できる |
| おすすめ | 既存客との取引をデジタル化したい | 未開拓の販売店をどんどん増やしたい |
自社ECと卸売りモールは、それぞれ役割が異なるため、目的に応じた使い分けが重要です。
さらに、両チャネルを併用する場合は、受注・在庫を一元管理できる仕組みを整えることで、二重管理や在庫ズレといったトラブルを防ぐことができます。
卸売ECを成功に導く2つの鍵
卸売のECサイトは、単に「公開する」だけでは成功しません。BtoB特有の商習慣を理解し、「取引先が使いたくなる環境」をいかに作るかが成否を分けます。
成功への鍵1. 既存顧客と「新規ショット(スポット)」のターゲットを明確にする
ECサイトを導入する目的が「既存顧客の業務効率化」なのか、「新規販路の拡大(ショット取引)」なのかによって、必要な設計は大きく異なります。
・既存顧客向け: 従来のFAX注文時と同じ「取引条件(掛け率・支払い方法)」をWeb上でも完全に再現することが最優先です。
・新規・ショット客向け: 複雑な審査を待たずに注文できる「クレジットカード決済」や、最小ロットの設定を分かりやすく提示し、取引のハードルを下げることが重要です。 ターゲットに合わせた「価格出し分け」や「決済手段」を事前に定義しておきましょう
成功への鍵2. 取引先が「FAXより楽だ」と感じる圧倒的な利便性
卸売ECの最大の競合は「これまでの慣れたFAX注文」です。取引先に「ECの方が便利だ」と思わせるためには、以下の工夫が不可欠です。
・マルチデバイス対応: 倉庫や店舗のバックヤードから、スマートフォンやタブレットでバーコードスキャンして発注できるような操作性も、現場の利便性を劇的に高めます。
・リピート注文の簡略化: 過去の注文履歴から「いつもの商品」を1クリックでカートに入れられる機能。
・リアルタイムな在庫・納期表示: 「電話で問い合わせる手間」を省けることが、最大の顧客サービスになります。
卸売ECの成否を分ける「2つの必須機能」
BtoC向けのECサイトでは代用できない、卸売ならではの複雑な運用をカバーする「2つの核となる機能」を詳しく解説します。
必須機能1. 取引先ごとの「個別単価・掛率」設定機能
卸売では「A社は上代の60%」「B社は特別価格」といったように、取引先ごとに価格が異なるのが通例です。これを手作業で管理していると、請求ミスや確認作業で現場が疲弊してしまいます。
- メリット: ログインした取引先ごとに最適な価格を自動表示。顧客は自分の仕入れ価格を即座に確認でき、問い合わせの手間がなくなります。
- さらなる活用: 「3ケース以上で5%OFF」といったボリュームディスカウント(ロット割引)を自動適用させることで、客単価の向上も狙えます。
必須機能2. FAX・電話注文を統合する「受注代行入力」機能
ECサイトを開設しても、全ての取引先がすぐに移行してくれるわけではありません。「うちは今まで通りFAXでいいよ」という顧客を切り捨てず、いかにスムーズにデジタルへ統合するかが鍵です。
- メリット: 営業担当者が顧客に代わって注文を管理画面から入力できる機能があれば、「FAX受注」と「EC受注」のデータが一箇所に集約されます。
- ネクストエンジンの解決策: 専用アプリ(BtoBオーダーなど)を活用すれば、外出先のスマホからでも注文登録が可能。アナログな注文もデジタルデータとして在庫・出荷管理に自動連携されるため、業務の二度手間をゼロにできます。
さらに重視したいのが、「実在庫とのリアルタイム連携」です。
ECからの注文と、電話・FAXでの注文が別々に管理されていると、二重発注による欠品トラブルが起こりやすくなります。これらを一元管理できるシステムを選ぶことが、卸売EC成功の「隠れた必須条件」です。
まとめ|卸売のEC化は「アナログとデジタルの融合」が成功の鍵
EC市場の急拡大、深刻な人手不足、そしてインボイス制度への対応。今、卸売業界においてEC化は「あったら便利なもの」ではなく、「持続可能な経営のための必須戦略」へと変化しました。
卸売のEC化を成功させるポイントを振り返りましょう。
- アナログ業務の自動化: FAX・電話対応を減らし、営業が「攻め」の時間を作る
- BtoB特有の機能活用: 取引先ごとの掛け率設定やクローズド運用を徹底する
- 一元管理の徹底: EC受注もアナログ受注も、在庫データとリアルタイムに同期させる
せっかくECサイトを導入しても、既存のアナログ業務と二重管理になってしまっては本末転倒です。自社の商慣習にフィットするシステムを選び、バックヤードの業務フローまで最適化することこそが、真の「業務効率アップ」と「売上拡大」に繋がります。
卸売ECサイト運営もネクストエンジンで効率化できる!
卸売を行なっている事業者様には、ネクストエンジンが提供している「BtoBオーダーアプリ」の利用が便利です。BtoBオーダーアプリには、卸先ごとに商品の価格や送料を設定する機能が備わっているため、ECサイト上での卸売販売を、自社ルールを適用しながら行えます。
また、アプリに卸先を直接招待できるほか、卸先に代わって注文を登録することもできるので、これまでアナログで対応していた業務も簡単にすることができます。
一気に卸先に普及させるのは難しいと思います。全てをデジタルにするのではなく、関係性が深い卸先のご意見を聞きながら、少しずつデジタルに変えていく企業が増えています。
無理なく皆さんの苦労を減らすなら、低コストでお試し感覚で始められるネクストエンジン「BtoBオーダーアプリ」がおすすめです。
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