ECの多店舗展開で売上を伸ばすには?作業を増やさない進め方

売上を伸ばすために、今の販路とは別のモールやカートにも店舗を出す「多店舗展開」を考えるEC事業者は多いでしょう。
多店舗展開では、店舗の数だけ増える受注・在庫・商品登録の作業を、店舗を増やす前に自動化しておくことが欠かせません。自動化しないまま店舗を増やすと、今の人数では作業が終わらず、実際の在庫と店舗の表示のずれも起きやすくなります。
本記事では、多店舗展開のメリット・デメリットを整理したうえで、作業を増やさずに進める4つの手順と、つまずきやすいポイントを解説します。
ECの多店舗展開のメリット・デメリットは?
店舗を足すと売上の入り口が増える一方、店舗ごとの作業も増えます。
メリット:届く客層が広がり、売上を1つの販路に頼らずに済む
多店舗展開のメリットは、まず届く客層が広がることです。モールは集客力があり、セールやイベントも定期的に開かれるので、その集客力を使えば、今の店舗では届かなかったお客様にも売れます。
また、販路が1つだけだと、その販路の集客が落ちたときに売上全体が下がります。販路を増やしておけば、1つのモールの集客が落ちても、ほかの店舗で売上を支えられます。
デメリット:受注・在庫・商品登録の作業が店舗の数だけ増える
店舗が増えると、毎朝モールごとに管理画面を開いて注文を確かめ、管理表に書き写し、購入者へメールを送る作業も、店舗の数だけ増えます。在庫数の書き換えや商品ページの登録も同じです。
在庫数を1店舗ずつ手で書き換えていると、更新の遅れや打ち間違いで、実際の在庫と店舗の表示が合わなくなることもあります。さらに、店舗ごとに運用のしかたを変えたり担当者を分けたりすると、業務が属人化し、ミスも起きやすくなります。
こうした作業やミスを減らすには、店舗を増やす前に、増える作業を自動化しておくことが欠かせません。
ECの多店舗展開の進め方は?
ECの多店舗展開は、増える作業を自動化しておく、出店先を選ぶ、商品データを準備する、1店舗ずつ出店する、の4つの手順で進めます。

1. 増える作業を自動化しておく
受注の確認やメールの送信を1件ずつ手で行ったまま店舗を増やすと、その作業も店舗の数だけ増えます。そのため、次の店舗を出す前に、受注の取り込みや在庫の更新、メールの送信を自動化しておきましょう。
自動化には、複数の店舗の受注と在庫を1つの管理画面で扱える一元管理システムを使います。対応するモール・カートの注文を自動で取り込めるうえ、在庫数から出荷待ちの注文の分を差し引いた「販売できる数」を各店舗へ自動で送るので、店舗ごとに在庫数を直す作業もなくなります。
2. 出店先を選ぶ
モールとカートは、始めやすさや費用、集客のしかたが異なります。モールは決まった形式に沿って設定すれば始められる一方、デザインの自由度が低く、同じ商品を扱う出店者と価格競争になりやすいのが難点です。また、出店手数料や販売手数料もかかります。
カートは、ブランドの見せ方を自社で決めやすくなりますが、集客は自社で行う必要があります。費用は、初期費用・月額・販売手数料の組み合わせがカートごとに異なり、初期費用や月額がかからないカートほど、販売手数料の率は高めです。
出店先は、今の販路で足りないものから選びましょう。集客が足りないならモール、ブランドの見せ方を整えたいならカートが候補です。
各モールの費用と特徴は、次の記事で詳しく解説しています。
なお、受注や在庫の管理にシステムを使う予定なら、そのシステムにつながらない出店先では、受注や在庫の作業が手作業のまま残ります。候補の出店先が、システムのサービスサイト上にある対応モール・カートの一覧に載っているかも、比べる項目の1つです。
3. 商品データを準備する
出店の前に、商品コード・商品名・価格・説明文・画像といった商品情報を1つの表にまとめた「元データ(マスターデータ)」を作っておきます。
商品ページの項目やカテゴリ、使えるHTMLタグや文字数の上限はモールごとに異なります。そのため、システムを使わない場合は、元データをもとに店舗ごとに商品ページを手作業で作らなければなりません。
一方、一元管理システムなら、共通の項目をシステムに1回登録し、モールごとの書き換えルールを決めておけば、出す店舗を選ぶだけで各モールの商品ページを自動で作れます。価格や商品情報を変えるときは、先に元データを直し、そこから各店舗へ反映するようにしましょう。
複数のモールへ商品をまとめて登録するやり方は、次の記事で手順ごとに解説しています。
4. 1店舗ずつ出店する
出店先の申込と商品の登録が済んだら、店舗を公開して注文の受付を始めます。
出店の準備が整うと、いくつかの店舗を同時に出したくなるものです。ただし、一度に出すと、注文の処理や在庫の更新が止まったときに、どの店舗のどの作業が原因かをたどりにくくなります。
店舗は1つずつ出し、受注から出荷まで滞りなく進むことを確かめてから、次の店舗に進みます。
多店舗展開を進めるときのつまずきと防ぎ方
多店舗展開では、出店するまでの段階で、次の3つがよくつまずくポイントです。
1. 一括登録や在庫連携に有料オプション・申請が要る
原因:モールによっては、外部のシステムから在庫数や商品データをまとめて送るために、出店料とは別に、モール側の有料オプションへの申込や申請が要ります。申し込むサービスや出す申請、その費用は、モールごとに異なります。
たとえば、楽天市場では、商品データの一括出力、商品ページの作成、在庫連携用の商品CSVの作成に、「CSV商品一括編集」(月額10,000円・税別)の申込が要ります。au PAY マーケットでも、在庫連携や商品ページの作成には「一括出品CSVオプション」の申込が必要です。
解決策:出店先を決める前に、在庫連携のためにモール側で申し込むサービスと費用を、各モールの出店者向けの料金や申込の案内で確かめます。前もってわかっていれば、出店の準備が途中で止まることはありません。なお、申込の手続きと費用は出店先を増やすたびに加わるので注意が必要です。
2. モール・カートごとにシステムとのつなぎ方が違う
原因:一元管理システムを導入しても、システムとつなげる範囲は出店先ごとに異なります。受注と在庫の両方を扱える出店先もあれば、受注だけ、在庫だけの出店先もあり、出荷報告を自動で行えるかもまちまちです。
また、在庫を連携するつなぎ方も、API、FTP(サーバーにファイルを送る方式)、店舗の設定にログインIDや在庫更新用のURLを登録する方式など、出店先ごとにさまざまです。
解決策:一元管理システムを導入する前に、出店先ごとに、受注の取り込み・在庫の連携・出荷報告のどれが自動になるかを確かめておきます。自動になる範囲や、ShopifyやTikTok Shopのように連携用のアプリを通してつなぐかどうかは、システムのサービスサイト上にある連携先の一覧に載っています。
自動になる作業とならない作業を出店先ごとに表にまとめておけば、どの店舗で何の作業が手作業で残るかを見渡せます。
3. モールごとに商品コードが違い、在庫がつながらない
原因:同じ商品でも、出店先ごとに「TS-001-RED-M」と「ts001rm」のように別のコードで登録されていると、システムは別の商品として扱います。これでは、受注処理も在庫連携も正しく動きません。
解決策:商品コードをあとから変えられないモールもあるので、出店の前に基準にするコードを決め、全店舗でそろえておきましょう。基準には、基幹システム(販売管理などの社内システム)やPOSレジのコードを使い、どちらもなければ倉庫のコード、それもなければ登録している商品がいちばん多い店舗のコードを選ぶのがおすすめです。
すでに登録した店舗のコードを変えられない場合、店舗側のコードを変えずに、システムに登録したコードへ結びつけられる一元管理システムもあります。ただし、結びつけられるモール・カートは限られるため、システムのサービスサイト上にある対応モール・カートの一覧で事前に確かめておくのが確実です。
なお、出店先ごとに異なる商品コードの結びつけから在庫の連携までを1つのシステムで済ませたい場合は、商品コードの紐づけ機能を備えたシステムを選ぶ必要があります。
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多店舗展開の導入事例
出店先を増やした事業者の事例を、3社紹介します。
1人で夜遅くまでの受注処理を自動化し、1年足らずで4店舗に拡大
朝日物産株式会社様は、淡路島で玉ねぎの卸売りを手がけ、生産とネットショップ販売も行っています。楽天市場の1店舗を1人で運営し、生産や経理も兼ねて、夜遅くまで作業が続いていました。
人を雇う前に仕組み化とマニュアル化が先だと考えて一元管理システムを導入し、受注処理、メール送信、送り状整理が自動になりました。導入から1年足らずでYahoo!、Amazon、BASEに出店して4店舗となり、売上は導入前の3倍以上です。その間も、運営は本人と手伝う娘2人で済んでいます。
3店舗目で追いつかなくなった手作業を自動化し、出荷件数が約6倍に
株式会社いなば園様は、お茶や海苔、和スイーツなどを製造・販売し、2012年には楽天市場と自社サイトの2店舗を運営していました。当時は、以前の受注管理システムに自動化の機能がなく、受注を1件ずつ手作業で処理していたため、3店舗目で業務が追いつかなくなりました。
一元管理システムの導入の決め手は、注文の全数確認、モールからの注文取り込み、発送方法の選択、メールの自動送信を解決できる点でした。導入すると受注処理の大半が自動になり、空いた時間でAmazon、au PAY マーケット、Qoo10にも出店しています。その後、出荷件数は導入当時の1万件程度から、2020年12月には6万件以上と約6倍になり、運営の人数は変わっていません。
立ち上げの段階から商品データを共通にし、コストを増やさず多店舗展開
丸久株式会社様は、徳島県の老舗アパレルメーカーで、子供服を中心にECを展開しています。EC事業の立ち上げ時から多店舗展開を予定しており、自社の倉庫で物流を行うため、他のシステムでは物流の仕組みが合わないことが課題でした。
立ち上げの段階から一元管理システムを導入し、倉庫管理システムと各モールのシステムをつないでいます。商品データをすべてのモールで共通にでき、コストを増やさずに多店舗展開できました。なお、モールを増やしすぎると負担のわりに成果が出ないため、Amazonには出店していません。
まとめ
ECの多店舗展開は、届く客層を広げ、売上を1つの販路に頼らずに済む売り方です。一方で、受注・在庫・商品登録の作業は店舗の数だけ増えます。店舗を増やす前にこれらの作業を自動化し、元データと商品コードを整えておけば、今の人数のまま販路を広げられます。
まずは、出店したいモール・カートに対応していて、受注の取り込みと在庫の連携を自動にできる一元管理システムを探すところから始めてみてください。システムのサービスサイト上にある対応モール・カートの一覧と料金表を見比べれば、自社の出店先に合うシステムを絞り込めます。
よくある質問
Q. 多店舗展開は、いつ始めるのがよいですか?
店舗が1つ増えても、受注の確認や在庫の書き換えを今の人数で終えられる見込みが立った時点が目安です。終えられない場合は、受注の取り込みや在庫の更新をシステムで自動にしてから、次の店舗を出します。
Q. 最初に足す出店先は、モールとカートのどちらがよいですか?
今の販路で足りない側を選びます。たとえば、集客を増やしたいならモール、ブランドの見せ方を整えたいならカートが候補です。詳しくは本文の「2. 出店先を選ぶ」をご覧ください。
Q. 店舗を増やすと、一元管理システムの料金はどう変わりますか?
システムによって異なります。つなぐモール・カートの数だけ月額が増えるシステムや、同じモール・カートで2店舗目を出すと月額が加わるシステムもあります。そのため、出店先を決めたら、システムのサービスサイト上にある料金表で、出店先の数による月額の増え方を確かめるのが確実です。
Q. 多店舗展開では、出店の前に商品コードをそろえたほうがよいですか?
そろえておくのが基本です。同じ商品に同じコードが付いていれば、出店先の間で在庫がつながります。一方、そろえられない場合は、店舗側のコードを変えずにシステム側のコードへ結びつける機能があるシステムもあります。詳しくは本文の「3. モールごとに商品コードが違い、在庫がつながらない」をご覧ください。
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